alovelog

続けられるよう頑張ります。(雑な)料理、サッカー見に行った時のこと、ランニングなどが大体の話題だと思います。

【全自動卓天和】バード 〜砂漠の勝負師〜 青山広美作品の世界

「全自動卓で天和*1を可能にするたった1つの冴えたやり方」

「大事な事は全部 バード〜砂漠の勝負師〜 が教えてくれた」

「バード〜砂漠の勝負師〜に見る良いトマトの作り方」

辺りをタイトルにしようと思ったんだけど、まとまらないのは目に見えているので穏当なものとした。まぁ率直に言うと僕この漫画好きなんですよ。なので読む人が一人でも増えたらなということで、あの、紹介します。

 

◆あらすじ

ラスベガスの凄腕のマジシャン『バード』が伝説の代打ち『蛇』と麻雀で対決する。全自動卓で不敗を誇り、ガード不能の超必殺技「全自動卓天和」を使いこなす『蛇』に対し、どう挑む?

 

つまるところ、麻雀漫画です。

 

が、やれ「何らかの選ばれし強運」とか「麻雀的戦術」とか「打ち回し」「読み」「色の偏り」「鉄壁の爆守備」とか「神様っ……どうか渡らせて下さいっ……一度でいい、この、逆転へのか細いタイトロープっ……」とか「その思考、嵌っている……既に泥中、胸までっ……」とか「起死回生っ……地割り天衝く、飛龍地斬四暗刻……!」とか、そういうのはありません。

 

それではどういうものか、ちょっと見てみましょう。(今後出てくる麻雀シーンは全て全自動卓で行われているものとしてご認識下さい)

 

◆登場人物

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以上!(左の少年がバード、右奥のおっさんが蛇、その手前の白スーツが不破です。※不破は正直覚えなくていいです)

 

◆バードさん、麻雀を打つの巻

バードさん、初めての麻雀です。

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……悪くない、良い配牌ですね。俺なら九萬かなぁ?三色は流石に遠いもんね。

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*2!?*3

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なんか明らかに数牌入れ替わってツモった!!!*4

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「曖昧なルールを出来るだけ利用」「リーチ時点でノーテンでも問題ではない」「要は和了った時点でテンパっていればいい」*5

これに対し、女性(般若沙羅*6さん)は「流局するとチョンボだし、牌のすり替えはイカサマである」と反駁します。*7

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イカサマの罰則は確かに「無い*8」ね、うん。でもお前、いや……うん

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「麻雀は環境的にもイカサマを黙認してるようにしか見えない」……刃牙幼年編中盤の「ボクシングには蹴り技、肘打ち、投げ技に関節技がない。以上の理由から君達は闘技者として不完全だ*9」とかいう煽りがあったけど、なんかそんなような事言い始めた!

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「カンは王牌をすり替える為の十分条件」「多牌は多いほど有利」「裸単騎は最高の多面張」「過ポン、過チーは戦術上の重要なオプション*10

とまぁ、そういうわけで「和了るんだったら手順が短い方がいい」「麻雀とは手段の如何に関わらず(≒通常用いられるルール上での是非は問わず)如何に早く14枚の和了形を整えるか」という勝負になる。

 

そしてその最速手が「天和」である。

 

そんな世界観です。

しかし時代は全自動卓。トランプで言えばカードを混ぜるのも配るのも機械がやっちゃう、人の手が介在し得ない環境な訳で、配られた段階で14枚の和了形が完成しているという事は余程の強運がないと不可能。しかしそれを任意に実行する最強の打ち手が本作のラスボス『蛇』であると。ヤバい。ヤバ過ぎる。

 

ガード不能の超必殺技「全自動卓天和」を看過、少なくともガードし、それを上回る。その技の読み合い、対策、更に対策。そうした常軌を逸した技や意地の応酬が本作の大まかな概要です。

 

◆最強の代打ち、トマトおじさん『蛇』

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『蛇』は家庭菜園を営むおじさんです。

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ヤクザである天狗家と付き合いがあり、自家製の沢庵を差し入れるなど人の良い最強の代打ちです。

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「こいつ」が何かはよくわかりませんが、トマト作りには一家言あるタイプですね。(さっきも芽を踏みかけた人に注意してました。粗忽者。使っていきたい言葉)

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山岡士郎が聞いたら激怒しそうな*11肥料信仰!どっちかというと海原雄山タイプ*12のトマトを志向している事が伺えます。(※不破については後程特集します)

 

◆勝負

そこにあるのはとにかくイカサマ。圧倒的イカサマ。見逃したなら、そいつが悪い。そのイカサマの最高峰「全自動卓天和」を巡るトリックの応酬、そこに流れるプロの矜持、二人の異能、二人の異常者の生き様。

(イカサマの応酬と言っても、古い作品ではありますが「雀鬼」の治外法権麻雀とも違うもので、独特の青山広美世界観空気感に満ち溢れていて、堪らない!*13 )

 

それでは、参りましょう。

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半荘10回戦、2vs2(バード、沙羅vs蛇、不破*14 )の総得点勝負となります。(こんな場所で麻雀してみたいもんだな)

 

勝負がはじまり、バードと沙羅が一勝を手にして迎えた次の半荘で『蛇』の雇い主が勝利を確信。『蛇』の全自動卓天和について語ります。

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「ねぇ……全自動卓で天和って仕込めると思う?」と問う組長に対し、「いや、無理だろ……」と言いたげな黒服(※実際言う)

組長もまた、その秘密については知らない。しかし「それ」を実現した『蛇』。

絶対不可能と思われた「全自動卓天和」を実現に至らしめた『蛇』の、実現に至らしめた「要因」について、組長は想いを馳せる。

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実現不可能に見える事柄に向かい足掻き続ける者

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世間はそれを愚者と呼ぶ

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採算をかえりみぬ蛮勇

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紙一重の狂気、宿痾の妄想*15

 

……しかし歴史を作ってきたのは、往々にしてそうした愚者の群れ

地球は丸いという信念だけで未知の航海に出たマゼラン

息子を実験台にした種痘の発明者ジェンナー

空気より重いものは飛べないという常識に挑んだライト兄弟

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 そうした偉業と比べるまでもなく、これは麻雀であり、イカサマそれ自体に価値はない。

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だが、それでもなお、胸が熱くはやるのは何故だ

不可能を可能にする命懸けの修練が

奇跡を生み出す悪魔の執念が

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我々の胸を魅了して止まないのは何故だ?

 

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天和字一色。全自動卓天和、成る。

 

「なんとか言えよ魔法使い。誰の為の挨拶だと思ってる?」

バード、想像を超えた*16『蛇』の絶技に…

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「ビューティフル……」

 

この流れ、この顔!!

青山広美節の真骨頂ですよ。

最高!もっ最高!!*17

 

この後、バードによる蛇の絶技解析、暫定対応、逆襲、蛇の深淵、バードの影(ここが裏のというか、作品の肝)、異能異端の極致の果てに勝負は決する。

 

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「運命は逃げ回るものじゃない。立ち向かうものでしょう?」*18

 

いやー、面白かった!マジで最高に面白い!何せこの絵よ。カッコいいでしょ!?カッコいいよね!カッコいいんだよ!そうに決まってる!!そうに決まった!!!

青山広美先生の作品で俺は断然この作品の絵が一番好き。最高だ。読もう!な!?そんで俺とバード話しよう!

 

(青山広美先生の麻雀漫画というと、トーキョーゲームも一部で有名ですが、これは流石に絵的に少女漫画時代の癖が抜けてないというか、過渡期感がありますね)

(この作品も今となっては語られる事も少ないですし、軽くトーキョーゲームも紹介しておきましょう)

トーキョーゲームとは……大地震*19による世界崩壊後の新宿新都庁*20で行われる命を賭した麻雀の事。ルールはフロアマスターが任意に決められる。勝てば上位階層へのキーが貰える。負けたら死ぬ。

 

ここで紹介するのは敵の一人「サムライ」

彼のルールは「トビ*21なし、完全青天井*22

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サムライさんご尊顔。※麻雀漫画です。

 

敵じゃないけどこんなのも

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※麻雀漫画です。

 

麻雀だから和了るぞ!

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31,457,300点!*23

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5,368,712,500点!

 

主人公もやられっぱなしじゃない。反撃だ!

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役が長ぇ!何点かは計算してみよう!*24

とにかくこれはこれで面白いので読んでみて下さい。

 

 

ともかく青山広美先生のバード、最高にカッコ良く熱いです。異端・異常者同士の異能バトル、矜持のぶつかり合いが好きな方は是非ご一読を!*25

 

僕が熱くなり過ぎたので、一服の清涼剤を書いておきます。ご笑覧下さい。

 

◆不破これ 〜不破これくしょん〜

それでは最後に、作中でとにかく『蛇』にボコられるばっかりの可哀想な相方「不破和人」のハイライトをご覧頂きお別れしましょう。

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次局の指示内容に異論を挟んだ不破に対し、脅しめいた説諭を施しつつ、首締め!

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前述の指示内容を逸脱し、想定していた以上の結果を出した不破に対し、躊躇なくワイン瓶を叩き込む!

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勝負所でとんでもない事が起こったにも関わらず、問題を把握出来ないまま軽口を叩く不破に対し、全体重の乗った左ボディ!

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その能無しの役立たずを相棒に選んだのは他ならぬ『蛇』自身であるが、そんな事はもう知った事ではない!床に転がし、不破の顔面を踏みつける!

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流石にストップがかかるが、不破和人、無念の鼻骨骨折KO。

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回復後、銃を用いて『蛇』へのリベンジを図るも、不破の右腕は敢え無く粉砕さる!

 

(ちなみにリメイク版バードだと2章で不破さんラスボスになってて最高だぞ!絵柄や展開など好き嫌いは更に別れると思うけど、チャンピオンでやってたギャンブルフィッシュが好きならハマると思う。リメイク版1章はこの全自動卓天和を巡る戦いです)

 

以上!!

 

ショアッッッ!!!!

 

*1:麻雀において、最初に順番が回ってくる親が、開始段階で和了形を揃えている事。最高手である役満の1つ。他競技者によるガード不能

*2:男ならこんな顔とポーズで立直をかけたい

*3:あと一手で完成しない状態でのリーチ、つまりノーテンリーチは反則、チョンボ

*4:リーチ後は手牌、手札を入れ替えてはいけないのに、入れ替わっている。つまりイカサマ

*5:つまり、牌は正規の手順以外ですり替えればええやんけ。と言ってます

*6:この女性も元天才マジシャン且つ麻雀打ち。『蛇』に惨敗し、心と体に傷を負わされる

*7:圧倒的に沙羅さんが正しい

*8:これは参加者同士がとり決める事で、ルールに記載はない。通常イカサマ前提で麻雀はしない。イカサマを現場で看過された場合、麻雀漫画にありがちな裏の世界的なアレだと、現行犯で見咎めた場合は「腕を折る」「その時点で負けが確定する」「死ぬ」などのペナルティが課せられる事が多い

*9:うろ覚え

*10:これは正直よう分からん

*11:緑健農法美味しんぼ「大地の赤」参照

*12:「(トマト育てるのに)イワシやカラスミをあげているに違いない!」と取り乱す、超初期の、キャラが定まってない海原雄山

*13:曽田正人作品、シャカリキ、め組の大吾とか好きな人はもしかしたらツボりかけるかも

*14:のち、とあるトラブルで相方交代

*15:宿痾:しゅくあ:長い間治らない病気

*16:バードは「天和は積み込めても役は作れない、好きな手を作れる訳ではない」と予測している

*17:うえやまとちクッキングパパ」リスペクト!うまいぞ!←アゴ顔で

*18:俺ぁここでなぁ、鼻の奥がツーンとくんだよ……

*19:アンゴルモアクラッシュ

*20:通称ゴルゴダタワー

*21:持ち点がマイナスになる事によるゲームの強制終了。普通はトビあり

*22:麻雀は符の計算を行い、決まった点数テーブルに当てはめた点数をやりとりしますが、この場合は符の基本点から、どれだけ役がついても満貫での点数キャップに当てはめず、純粋に倍々していく計算方法になります。4役つくと概ね現行使われる点数を大幅に超えてきます。電卓使うとエグさがわかる

*23:麻雀、開始時点の持ち点は大体が25,000点か、多くて30,000点

*24:378京3023兆6869億………

*25:さっきも書いたけど曽田正人作品好きな方には或いは少し刺さるかも?