レコンビン「ねぇ、秒速5センチメートルって知ってる?」 完
今、50億ドン支払えば、きっとあの人も振り返ると、強く感じた。
「2015年までいればいいのに(札幌に)」
「でも、いろいろ事情もあるから」
「そうだな。ゲアンにもうまい事言ってやれよ。」
「うん」
「何かあったら、電話するのよ、コンビン」
「大丈夫よ。来月にキックオフイベントで会うんだから。
そんなに心配しないで。寒いから、もう戻りなよ。」
―ゆうべ、札幌の夢を見た。私も彼もまだ子どもだった。きっと昨日はずしたFKのせいだ。
「小野さん、基本合意いいかな?」
「はい」
ただ交渉をしているだけで、報道がすごくメディアに積もる。
たまにぶっ込む日刊にも、内通者が疑われる報知にも、大本営の道新にも。
「札幌のことは今でも好きです」
半年間付き合ったソンラム・ゲアン側は、そうメールに書いていた。
「でも、私たちはきっと千回も条件をやり取りして、
たぶん完全合意には一センチくらいしか近づけませんでした」と。
この2ヶ月間、とにかくコンビン残留に進みたくて、ベトナムの英雄に手を触れたくて、
それが具体的に何を指すのか、ほとんど(周囲のスポンサー絡みで)脅迫的とも言えるような
その必要性がどこから湧いてくるのかも分からずに、
僕はただ交渉を続け、気づけば、日々弾力を失っていくゲアン会長の態度が、ひたすら辛かった。
そして、ある朝(※1月4日)、かつて、あれほどまでに真剣で切実だった
コンビンの札幌への思いがきれいに失われていることに、僕は気づき、
もう限界だとわかった時、交渉を辞めた。
昨日、夢を見た、
ずっと昔の夢。
その夢の中では僕たちはまだプレーオフ圏外で、
そこは5人程度の壁に覆われたペナルティアーク付近で、
敵のサポーターはずっと遠くに疎らに見えるだけで、
降り積もる報道には、私たちが歩いてきた足跡しかなかった。
そうやって、
いつかまた一緒に札幌でやることができると、
私も、彼も、何の迷いもなく、
そう思っていた。
…こんな話があったとかなかったとか(ねぇよ)
桜花抄1 http://d.hatena.ne.jp/alovesun/20140107/1389106630
桜花抄2 http://d.hatena.ne.jp/alovesun/20140107/1389109183
桜花抄3 http://d.hatena.ne.jp/alovesun/20140107/1389109838
秒速5センチメートル http://d.hatena.ne.jp/alovesun/20140107/1389141275 ←イマココ