【漫画】マネーフットボールに見るお金の大切さと能田達規作品の世界
『監督交代ブースト』、ある?ない?
……ないのです。
(※ハッキリした約束事を徹底するなど、後任監督の手腕によって成績が向上する事はあります:2016年夏以降の名古屋などはまさにソレ)
と言う事で初手からある種の希望に縋る人を棒でつついてドブに沈める様な文言が出ましたが、何かと言いますと、能田達規「マネーフットボール」の紹介です。みんなで読もう!マネーフットボール!
(11/22追記:最終巻の7巻が出ましたぞ!)
◆あらすじ
N1(※J1みたいなもん)浦和レッドスター(※浦和レッズみたいなもん)からN2(※J2みたいなもん)愛媛イーカッスル(※愛媛FCみたいなもん)にレンタル移籍してきた梶本洋平(※主人公みたいなもん。というか主人公)は1年での浦和復帰を果たせず、愛媛でひと旗あげるべくレンタル2年目シーズンを奮闘する中、チームメイトや新監督などからサッカーにおけるお金、様々なデータの重要性、もっともらしく語られるセオリーの意味、その他「サッカーのデータ」に関する色んなことを学んでゆく……
◆サッカークラブとお金
イーカッスル(以下、愛媛と呼称します)の第二GK船井さんは自他共に認めるデータマニアで、サッカーに関する色んなデータを、脳筋丸出しの主人公梶本洋平(右SB)に色々教えてくれる超重要人物。俺の中では寧ろ主人公です。(能田達規先生の「GETフジ丸」「オレンジ」に於いてもGK描写は力が入っており、特に「オレンジ」における南予オレンジトップチームの2人のGKに関する描写は涙なくは読めないんですけどここでそれ書くとそれだけでひと記事になるので、ここでは省きます)
それでは参りましょう。船井さんのサッカークラブ予算講座!
愛媛イーカッスルは年間予算規模10億円。これが全て強化費(選手やコーチングスタッフなどの人件費)とはなりません。
はい、営業関連費用でもう半分になりました。(実在する様々なクラブでは会場使用など試合開催関連費用に結構な差が出ており、例えば北海道コンサドーレ札幌などは他の同予算規模クラブに比して試合開催関連費用が1億から2億程度多く支出してます。札幌ドームが過剰にリッチな施設でそもそも使用料が高いのは仕方ないとして、陸スタの厚別競技場もJ1ライセンスを満たさない施設な割に他地域の同等施設に比べて3倍程度利用費が高い。それらは強化費にダイレクトに響いております)
その他チームの運営費用、アカデミー運営費用、コーチングスタッフ人件費が差っ引かれ……
最終的な選手人件費はトップチーム40人程度で3億円となりました。これはしんどいですね。年俸は低く抑えられるでしょうし、有望な選手と高額な複数年契約などは難しい状況になるでしょう。 (この辺は1巻の内容になります)
◆サッカークラブと『強奪』
予算が少ないとどうなるか、作中の例を見てみましょう。作中だぞ。作中だからな?
愛媛は札幌(ライラック札幌)と愛媛ホームで対戦です。札幌の監督は以前愛媛で監督していたニーリッチ監督みたいですね。(※作中だぞ)
どうも監督の他にも元愛媛の選手が札幌にいるようです。
元愛媛のエースストライカー池田。イケメン。(なんとなくですが、彼は試合前にピッチに出てきて歯磨きしたり、なんか棒を振り回してストレッチしたり、そんな事はしなさそうな気がします)
どのように獲得されたのでしょう?
「いいな愛媛の18番*1。幾らかかんねや?」
『……たったそれだけ!?』
という事で獲得されました。*2
作中の対戦のハーフタイム、VIPラウンジではこのような会話が成されます。
「強奪やめてよー」\ハハハ/
ひとしきり自虐や他虐的談笑が交わされた訳ですが、『強奪』に関しては札幌さんサイドにも言いたい事はあるようです。
『強奪』と恨み言を言うが、悪条件で働く選手をブラックな環境から救済してやってるんだと。
『引き抜かれたくなければ年俸を上げて複数年契約してプロテクトするべきだ』
(その為には金が要る)
『プロサッカークラブにおいて貧乏は悪だ。ウチももっと予算を増やさないと…』
……というお話です。 (この辺は3巻の内容になります)
N2ならぬJ2でも各クラブ集客、スポンサー開拓にガリガリ動いて予算規模拡大させてますよね。
10年前よくあった「地域貢献やと思って弱いけど支えちくり〜」「アカン死んでまう〜〜」みたいな泣き言や地域の善意に縋るだけの経営がだいぶなりを潜め、「楽しみや価値を提供する。そのパートナーとして一緒にやりましょう」というビジネスの姿が一般化して来たのは心強くあり、また、J2がこれまで以上の魔境と化す恐ろしさも感じます。
ここまででもかなり長くなって来ました。ホントは作中の各クラブネタとか諸々紹介したかったんですが、これからは僕の好きな描写をご覧頂き、皆様のマネーフットボール購入欲を刺激出来ればと思います。
◆スタジアム描写が最高
能田達規先生の「オレンジ」「オーレ」でもそうだった*4んですが、まーホントに能田達規先生の描く、スタジアムの俯瞰、見上げる、応援団、そういった描写がたまんねーんです。
大分のドーム型スタジアム(多分バスで行くんやろうなぁ…)
北九州のベイサイドスタジアム(多分小倉駅から徒歩5分とかなんやろうなぁ……)
讃岐のスタジアム(多分ハーフマラソン開催されたりしとるんやろうなぁ…)
んでメインスタンドがでけーのよ。
いやー、能田達規先生のスタジアム描写最高じゃないすか?
オレンジはリアル書籍だけ持ってて電子書籍持ってないから紹介しにくいんですけど、幕張イーリスのスタジアム、長崎テンボスのスタジアム、南予ボンボンスタジアム、奈良モノリスの陸スタ俯瞰、とにかく色々ありましたよね。あるんですよ。
オーレ!(コミックバンチで連載してた2部リーグの上総オーレを舞台とした、創設から盛り上がるも夢破れ、プロリーグから降格しかけてるクラブにまつわる、相当暗い部分を描いた、それ故希望もあるお話。全5巻)のスタジアム描写も熱いので紹介したいと思います。
かずさ公園陸上競技場。めっちゃ国体スタジアムですよね。フェチズムを感じるレベルで国体スタジアム。メインの申し訳程度の屋根とか。厚別、金沢西部緑地あたりギュンギュンきますね。
鳥栖スタジアム。そのまんま。鉄道まで描写。こういうのもイイんですけど、やっぱ中視点です。
上総オーレの出向社員中島、専スタに驚愕!(鳥栖スタは実際すげーっす)
こんな描写も!(レンズの効果イカす)
宮崎シーガイアをアレしたドーム型スタジアムなんかも!
スタジアム描写は観衆の描き方もすごい!
上総オーレの応援席!(オレンジだと埼玉レオーネ第二戦の描写が凄まじかったですね)
選手交代シーン。切り取ってるけど、これだけで1エントリ書けるぐらいこみ上げるシーン。
これはリアル書籍で愛蔵版が出てまして、おまけもあるらしく、そちらを買っても良いと思います。
吉見さん萌え~^^
いやー、能田達規先生のサッカー漫画って本当にいいもんですね。
ではまたお会いしましょう。(唐突の水野晴郎)
※文中で言及しなかったフットブルース(オレンジの後チャンピオンで連載してたやつ)に関しては、うん、まぁ、アレだ。野球との対立構図的なところから、近場でサッカーをはじめて…と、うん、なんというか、チャレンジング過ぎたよね!
また、審判、ホペイロ、ドクター、サポーターなどの裏側を描いた「サッカーの憂鬱」も宜しくな!
(「サッカーの憂鬱」作中の「代理人」はマネーフットボールにも出てくるぞ!)
以上!
ショアッ!!