俺が子供の頃は
「どーもー」『どーもー』
「はい、もう2019年も終わりということで、ちょっと今年を振り返りたいんですけども」『おう』
「変わりましたね。時代」『あー、令和ね』
「平成が終わって令和。聞けばセンター試験も変わるとか」『まぁそれは詳しくは知らんけどまだみたいですけどね』「そうですか」
「まま、それはともかく!ゆくゆくは僕らも言うようになるんやろなと」『何を?』
「ハァ〜、キミ令和生まれ!?ハァ〜!」『あ〜、それね』
「僕ら言われたでしょ?えっ!?平成!?若い〜!とか」『ありましたね。もう流石にここ何年かは無いですけど』
「いや、皆さん、ホントにあったんですよ。平成=若い!みたいなの」『信じられないかもですけどこれはホントに』
「何か知らんけど昭和の人とかめちゃめちゃ言うからね。若い〜!俺が子供の頃は〜!とか」『言う言う』
「何なら盛ってるよな」『盛ってる』
「テレビが回す奴で〜!たまに停電あって〜!」『それはあったらしいけど』
「先生が殴る〜、学校の廊下をバイクが走る〜」『それも、まぁ』
「……ぇぇ…?」『な、な、うん!とにかく、言うよな?言う!言うよ!昭和の人ね、こっちの若さ指摘から入って、結局自分の話するよな?』
「もうすっごい言う!昭和の人!前時代的、非文明、蛮族的な事を!さも当然のように!聞いてないのに!面白いと思って!どうでもいい事を!昭和ァー!」『言い方!』
「ごめん」『謝れるのは偉い』
「ありがとう」『素直なところ、好き』
「へへw」『ふふw』
「まぁ何かね、親のおつかいで煙草買いにいかされた〜とか、酒買いにいかされた〜とか」『ゆるかった時代でしょうしね』
「小学生ぐらいならまだ酒も煙草もおつかいして大丈夫だったんですけど、まぁ中学生なったら微妙な空気が流れますよね」『あ〜、ご近所の店なら色々わかってくれてるからともかくね』
「まぁ今はもう無理ですよね」『売った方が叱られますからね』
「特に昭和の人が言うてた奴だとアレ」『なんですか?』
「……あのぉ、僕ぅ」『え?何?急に…』
「おつかいしてる子供よ。合わせて!」『ああ』
『どうしたの僕?今日はおつかい?』
「あのぉ、僕ぅ、お父さんに言われてぇ、これぇ…」『メモかな?どれどれ……これ何?』
「統一地方選挙の投票用紙」『ダメだからね?』
「でもぉ…お父さんがぁ、たかし行って来い!言うてぇ」『いやいや……たかし君……』
「なんかぁ、昼からお父さんテレビ見てぇ、怒ってちゃぶ台叩いてぇ……えぐっ、うっ」『酷い親父やな……でもね、これは』
「たかし!はよ○○候補と○○党に投票してこんかい!言うて……」『たかし君……』
『日本じゃ代理投票はダメなんだよ』「うわーん」
『選挙の原則言うのがあってね、たかし君』「うわーうわーん!お父さんにぃお父さんにぃ、怒られるぅー」
『普通選挙、平等選挙、秘密選挙に…』「直接選挙」『食い気味かつ冷静に来るなぁ、たかし君』
「直接選挙とは、選挙権を持った人達が直接候補者から選出する事である」『なんやこいつ』
「対になるのは間接選挙で、これは日本においては内閣総理大臣の選出などにあたる。直接選挙で選出された議員の投票で選出するのである」『お、おお』
「尚、投票に来られない人の代わりに投票を行う、認められた制限の中で記入を行うなどの行為は委任や代理投票と呼ばれ、直接選挙とは関係がない。全く関係がない」『腹立つなコイツ』「びっくりするぐらい関係がない」『ああもう!』
「おじさん勘違いしてた系?」『つぶらな瞳で見てくるな!腹立つ……』
『まま、何にせよダメです。キミまだ18なってないでしょ。それはね、ダメです。確か!』「え〜、うろ覚えのくせに、え〜」『腹立つな』「じゃあお父さんになんて言えばいいの……?怒られちゃう」
『たかし君よこさんと、自分で投票所来てください。って言えばいいよ』
「そんな言葉でテレビ番組に雑に煽られた憎悪をちゃぶ台にぶつけるような知性に欠けるお父さんが投票に行ってくれるかなぁ……」
『辛辣……うーん、お父さんの知性云々はおじさんわかんないけど、こればっかりは仕方ないからねぇ』
「お母さんの分も預かってるんだけど……」『マジか』「ホラ」『マジだ』
「お母さんもお父さんと一緒にテレビ見てキレ散らかしてたよ」『悲惨の一言だな』「ミヤネ屋」『知らんけど』
「まぁいいや、帰って伝えてみるよ!色々ありがとうおじさん」『おう、怖くなったら投票所に逃げてくるんだぞ』「うん!」『20時までは開けてるからなー』「はーい」
『行っちまったか。それにしても酒やら煙草ならまだしも投票を子供にやらせてたとはひどい時代だったんだなぁ』
\あ〜父さん母さ〜ん/
『なんだ!?』
\あ〜感謝して〜ます〜/
『あの小僧か!?たかし君!?』
「へへ、お父さんお母さん投票するって」
『おお、よかったな!』
「その後は外食するんだって。なぜか知らんけど」
『それは正直なんでかわからんな』
『あとさっき歌ってたやつハッピーサマーウェディングで選挙関係ないから』「そうなの?!」
『選挙のあと外食するのはザ・ピースだろ』「ホントにぃ?」『自信ねぇわ!悪戯な目つきしやがって鬱陶しい』
『ともかく!少なくとも令和生まれの人にはこの辺のやり取り全く理解して貰えないだろうな』
「選挙権のくだりが?民主主義の根幹だろ!」『歌の方だよ!もうやっとれんわ』
「やっとれんだと!?民主主義をか!?選挙をか!?お前が、世間が諦めても、俺は戦うぞ!ブルジョア支配の打倒!プロレタリア革命の達成!我々は!鎖の他に!失うべきものを!持たなーい!」『もういいよ!』
「街と山との連携だよ!」『やめなさい!』
「く〜っ!やっぱり令和の時代に共産主義革命は早過ぎたか〜」『適当な事言ってんじゃないよ!』
「これ……どうする?」『知らないよ!』
「オチねぇなぁ……」『お前のせいだろ』
「じゃあ……」『うん……』
「すみませんでした」
『謝れるのは偉い』
「ちゃんと謝った!」『素直なとこ、好き』
「へへw」『フフw』
「じゃあ、終わっていいかな?」
『いいと思うよ』
「『ありがとうございました……』」