明治安田生命J1リーグ 第参拾弐節「終わる世界 / Do you love me?」
存在理由、レゾンデートル
J1にいても、よいりゆう
北海道コンサドーレ札幌、彼の場合
少年*1は自ら死を願った
少年*2はその希望を叶えた
最初の降格圏クラブは消えた
だが、北海道コンサドーレ札幌は苦悩する
何故負かした*3
何故負かした*4
何故負かした*5
何故負かした*6
何故負かした*7
「だって、仕方なかったんじゃないか」
何故負かした*8
「だって、新潟は、彼はJ2だったんだ」
同じJ1なのに?
「違う、J2だ。僕らの敵だったんだ」
同じJ2だったのに?
「違う、違う、違うんだ」
「私と同じJ1だったのに?」
「違う、J2だったんだ」
「だから希望を見せた*9の?」
「そうさ、ああしなければ僕らが降格しちゃう、みんなが降格させられちゃうんだ」
「だから負かしたの?*10」
「好きでやったんじゃない。でも仕方なかったんだ」
だから負かした*11
「助けて」
だから負かした*12
「助けて」
だから負かした*13
「誰か助けて」
だから負かした*14
「お願いだから誰か、助けてよ」*15
「そうだ。生き残るなら新潟くんの方だったんだ。僕なんかよりずっと彼の方がいいクラブだったのに。新潟くんが生き残るべきだったんだ」
「違うわ。生き残るのは生きる意志を持った者だけよ。新潟フロントは死を望んだ。生きる意志を放棄して見せかけの希望*16にすがったのよ。北海道コンサドーレ札幌くんは悪くないわ」
「そうかな?」
不安
「本当にこれでよかったのかな?」
強迫観念
「わからない。僕はどうしたらいい?どうしたらいいんだよ?」
何が怖いのか?
「何が?」
何が怖いのか?
「自分が」
何が怖いのか?
「嫌われること」
何が怖いのか?
「誰に?」
何が怖いのか?
「誰だ?」
何が怖いのか?
「それはチェアマンだ。チェアマンに雪国は捨てられた、嫌われたんだ」
「嫌われたらどうしよう?どうしたらいいんだろう?」
「どこだろう?ここ」
「どこに行けばいいんだろう?何も見えない、何もわからない」
「…川淵さん、大東さん?ねえ、どこ行っちゃったの村井さん?ねえ、僕はこれからどこへ行けばいいんだ?村井さん、岡田さん、早野さん、玉乃さん、健介*17、倉敷さん、加持さん*18、父さん、母さん。誰か教えてよ、どうしたらいいのか教えてよ」
「明治安田生命JリーグDivision1」
「結局、僕はこれに乗るしかないのか?相手クラブを降格させてまで。野々村さんやみんなの言う通りに、またJ1に残って戦えっていうの?松木さん、何か言ってよ、答えてよ」
何故J1に残るのか?
「みんなが残れって言うから」
だからJ1に残るのか?
「みんなの、それがみんなの為なんだからいいじゃないか」
みんなの、他の人の為にJ1に残るのか?
「そうだよ、いいことじゃないか。とってもいいことじゃないか。そうすればみんなが褒めてくれる。大事にしてくれるんだ」
「嘘ね」*19
「…」
「あんたバカぁ?結局、経営の為じゃないの」
「…」
「そうやって、またすぐにステークホルダーに言い訳してる」
「そっかな?」
「他人の為に頑張ってるんだと思うこと自体、楽な経営してるって言うのよ」
「そうなのかな?」
「要するにお金が足りないのよ、コンサドーレ札幌は」
「そうなのかな?」*20
「そんなの、ただの赤字、債務超過気味だっただけじゃない」
「そうかもしれない」*21
「帳簿がリーグに求められる要件を満たす事をただ望んでるだけじゃないの」
「そうかもしれない」*22
「人から幸せを与えられようと、ただ待ってるだけじゃないの。偽りの幸せを」
「それはあなたも同じでしょ」
「えっ…」
(中略)
「僕*23を見捨てないで」
「私*24を捨てないで」
「私*25を降格させないで」
「これは何?」
「協会の田嶋さんが進めていた、Jリーグの秋春計画よ」
「これが」
「その一部らしいわ」
「これで降格?全ての結果なのか?これが」
「たくさんある事実、その中のひとつよ」
「あなた*26が望んだ結果なのよ」
「僕*27が望んだ?」
「そうよ。破滅を、誰も救われない世界を」
「違う、誰も救ってくれなかっただけだ、僕を」
「誰もあなたを救えないわ」*28
「これは、君が望んだことだ」
「破滅を、降格を、J2への回帰を。あなた自身が望んだのよ」
「これがJ2なのよ」
「J2ってなんだ?」
「日本最高峰と呼べるリアルフットボールリーグのことよ」
「地方と四国と北関東と共にある、君自身のリーグのことさ」
「君がどう受けとめどう認めるかは、君自身が決めるリーグだ」
「今はただ与えられるだけの、あなたのリーグなのよ」
それがJ2
「どうしようもないあなたのリーグよ」
「もう全て決まりきってるリーグだろ」
「違うわ。あなたが決めているリーグなのよ」
「君の心がそうだと決めているリーグなのだ」
それがJ2
「昇格しようとする意志も」
「残留したいと思う心も、あなた自身が望むことなのよ」
「この暗闇*29も、この半端な状態*30も、全て僕*31が望んだというのか?」
「そうよ」*32
「閉鎖された新潟フロントが心地いい世界を、君は望んだ」
「指揮官人事に弱いフロントを守る為に」
「反町以降安定しない成績を守る為に」
「これはその結果に過ぎないわ」
「閉塞されたコネクションでは、ヨソのOB頼りの監督人事では、J1では生きていけないの」
「でもあなたは世界の、自分を取り巻く世界の閉塞を願った」
「嫌いな監督を排除し、より孤独な世界を願ったのはフロント自身の心」
「それが導き出された小さなフロントのやすらぎの世界」
「この形も終局の中のひとつ」
「あなた自身が導いた、J1の終わりなのよ」
そして、最終節への道は
つづく
*1:オレンジのチーム
*2:オレンジのチーム
*3:※負かしてない:札幌の1分1敗
*4:※負かしてない
*5:※負かしてない
*6:※負かしてない
*7:※負かしてない
*8:※負かしてない
*9:※勝ち点4を与える大奮発
*10:※負かしてない
*11:※負かしてない。勝ち点4を与えている
*12:※負かしてない。勝ち点4を与えている
*13:※負かしてない。勝ち点4を与えている
*14:※負かしてない。勝ち点4を与えている
*17:※正直スマンカッタ
*18:唐突の選手
*19:※そうでもない。大事にしてくれる。というか残らないとホントに酷い扱いを受ける。
*20:すっとぼけ
*21:真顔
*22:迫真
*23:札幌
*24:山形
*25:新潟
*26:新潟フロント
*27:新潟フロント
*29:J2降格確定
*30:何やかやで最下位は脱しそうだけど指揮官は退任
*31:新潟フロント
*32:断言