北海道コンサドーレ札幌J2優勝J1昇格おめでとうございます!(時候の挨拶)
<追記>
今回の話は読んだり想像したりが難しい*1話でしょうから、結論だけ簡潔に示しておきます。
「札幌vs金沢は、他会場の経過により残り20分で双方△が最適戦略になり、両者の利害が完全に一致した。その為両者が*2点数を動かしに行かなくなった」
という事です。うん。耳にタコですね。
それでもスポーツマンシップがどうこうエンターテイメントが云々言う人もいるでしょう。それは自由ですし、一面正しくもあります。そんな方に(何を言ったところで)理解されないまでも、最適戦略を取った事による両者の利得を挙げておきます。
◆札幌vs金沢、70分過ぎ*3からの利得表
チーム | △の利得 | ○の利得 | ×の利得 |
---|---|---|---|
札幌 | J2優勝J1昇格(J2賞金0.2億、J1分配金3.5億、降格翌年度の救済金2.8億取得権利) | 同左 | 3位PO進出(J2賞金0.05億、残留の場合J2分配金1.5億) |
金沢 | J2J3入替戦進出(J2なら1.5億、J3なら0.3億) | 同左 | J3自動降格(分配金1.5億→0.3億) |
おわかりだろうか?
両チーム「△と○で利得が同じ」であり、もし○を狙って×となった場合、分配金の面だけでも札幌は2年で3.45億の損失*4、金沢は単年で1.2億の損失を被る事になります。(○になっても△以上に得るものがないのは利得表から分かる事と思います)*5
×の結果によりカテゴリが低い状況を招くとなれば、現有メンバーから弱体化もするでしょうし、何なら数年スパンの中期強化計画、経営計画全体の頓挫、方針変更にまで至り兼ねません。*6
そんな中「△」は前述の通り「両者とも最大の利得を得られる試合結果」であり「双方がノーリスクで同時に取得可能な試合結果」だった訳です。ならそれにするよねと。
斯様に2016年J2最終節札幌vs金沢の最終盤は
「2つの “それを生業とする” プロフェッショナル集団*7が、未来を見据えて、通年の(または数年来の!)プロジェクトを実現可能な最良の結果で完遂すべく選択した事」
だったのです。凄い!凄くない?俺は凄いと思う。
両者の試合中の意思疎通は言葉や文字では無かったであろうに。凄いもんを見た。*8ありがてぇありがてぇと、手を合わせるような、そんな珍しい事象であった事を理解されたい。
</追記>
◆では、本文だ。
当項では札幌vs金沢の試合の、主に「状況」について時系列で書いてアレしようと思います。
また、以前より指摘というか、疑問を挟まれておったのですが、勝ち負けを表す時に「◯△●」だと、背景を黒指定してる時とか正直わかんねぇよってのを見まして、なるほどな。なるほどな。なるほどなるほどなるほどな。となりましたので、ここでは「◯△✕」と表現しますので宜しくご了承下さい。
◆試合前の状況
札幌サイド
順位 | クラブ名 | 勝ち点 | 得失点差 | 総得点 |
---|---|---|---|---|
1:J1自動昇格 | 札幌 | 84 | +32 | 65 |
2:J1自動昇格 | 清水 | 81 | +47 | 85 |
3:昇格PO進出 | 松本 | 81 | +29 | 60 |
→△以上で優勝+J1昇格決定
→✕の場合、清水松本のどちらかが△以下で昇格決定。清水松本が両方◯且つ松本との得失点差勝負、総得点勝負に負けると3位。
→札幌の自力優勝昇格決定条件は勝ち点1であり、勝ち点3は必要条件ではない。負けた場合は完全他力。
「最大利益*9を得られる状況は90分間不変である」
金沢サイド(ここはめんどくさい)
順位 | クラブ名 | 勝ち点 | 得失点差 | 総得点 |
---|---|---|---|---|
20:J2自動残留 | 岐阜 | 40 | -25 | 43 |
21:J2J3入替戦 | 北九州 | 38 | -18 | 43 |
22:J3自動降格 | 金沢 | 38 | -24 | 36 |
前提1:金沢は北九州より上の結果を出さないと自動降格する。
前提2:金沢✕で現実的には自動降格*10
前提3:金沢△北九州✕で入れ替え戦進出
前提4:金沢◯の場合、自動残留の目はなくはない*11
金沢の状況を別の書き方すると以下のような感じ
金沢✕→自動降格*12
金沢△→北九州が✕で入れ替え戦
金沢◯→岐阜△✕、北九州△✕で自動残留
→岐阜△✕、北九州◯で入れ替え戦
→岐阜◯、北九州◯で自動降格*13
→岐阜◯、北九州△✕で入れ替え戦
金沢は「あわよくば○だが、○としても他力。×で自動降格が確定。なので、試合を壊さず、他の試合が動くのを待つ事が可能な状況を保ちたい(最大利益が他会場経過により変動する)」
札幌は「△以上で最大利益が自力確定なので、リスクは抑えて失点しない戦いをしたい」
となる。*14
試合における(金沢サイドの)他試合含めた時系列は以下のような感じ
時間 | 山形-北九州 | 岐阜-東京V | 金沢の条件 |
---|---|---|---|
23 | 0-0 | 0-1 | ◯自動残留△✕自動降格 |
28 | 0-0 | 1-1 | ◯自動残留△✕自動降格 |
33 | 0-0 | 1-2 | ◯自動残留△✕自動降格 |
35 | 0-0 | 2-2 | ◯自動残留△✕自動降格 |
HT | 0-0 | 2-2 | ◯自動残留△✕自動降格 |
49 | 1-0 | 2-2 | ◯自動残留△入替戦✕自動降格 |
52 | 1-0 | 3-2 | ◯△入替戦✕自動降格 |
59 | 2-0 | 3-2 | ◯△入替戦✕自動降格 |
63 | 2-0 | 4-2 | ◯△入替戦✕自動降格 |
81 | 3-0 | 4-2 | ◯△入替戦✕自動降格 |
……おわかり頂けるだろうか?
他試合が1点差であれば状況は十二分に変動するので対応が変わる事はないのだが
「63分(後半凡そ20分)以降は金沢の現実的な最高目が【入替戦進出】となり、その唯一にして最高目の結果は、勝っても引き分けても、負けさえしなければ手に入れられる」
という状況が出来上がっているのである。
ここにおいて、札幌と金沢は
「双方、引分で最高の結果*15を手に出来る」
「双方、勝つ事に引分以上の利得がない」
「双方、負けると1年間やってきて積み上げた可能性が破綻する*16」
と、完全に利害が一致したのだ!ズッギャアァーーz__ン!!
試合を改めて見直しての主観であるのだが、
60分程度までは金沢はFWが札幌DFにプレスをかけ、攻撃となればサイドから崩しにかかる。
札幌も同じく似たような動き。双方ボランチを前に出すリスクは余りかけないが、FWとサイドが行く。
70分過ぎから金沢のMFが前を向いてボールを受けなくなる。札幌のプレスをいなすようなトラップとキープを狙い、極力金沢ボール時でDFラインへ返す事を狙う。
80分過ぎからはそれが顕著になる。
札幌も同じような時間帯でCKを取得するのだが、河合が進藤に、ソンユンが櫛引に状況を伝え、85分以降は完全に札幌DFラインでのボール回しとなる。*17
93分、画面上は92:58で扇谷主審の笛がなり、
札幌は「J2優勝J1昇格」
金沢は「最下位から入替戦進出」
という結果を手にした。
と、そういう試合でありました。
40試合以上やった最終節、首位と最下位の対戦でここまで状況が変化し、後半20分過ぎてようやく状況が確定し、利害が完全に一致する。というのはそう滅多にあるものではないと思います。Jリーグでは恐らくはじめての事でしょう。*18
こうした試合がまたあるとは思えませんが、もし次があるなら、もっとなんと言いますか、楽しめたらいいよね☆という最終節でした。
北海道コンサドーレ札幌、J2優勝、J1昇格、本当におめでとうございました!
当記事のアップが入替戦開始に食い込んでしまいましたが、ツエーゲン金沢さん、入替戦ファイトです!
(追記:第1戦勝利おめでとうございました!)*19
以上!
ショアッ!!!
↑
劇的な感動昇格決定でなく、狐につままれたような状況だったので、試合後の片付けの際「それっぽい」感動写真を撮影した抜け目のなさである。
書き忘れてましたが、「札幌の命拾い」は、端的に言えばアホほど怪我人が多く、走れない選手*20を普通に試合に出してた上、繋ぐことが苦手な選手を不慣れな場所で使わなきゃいけなかった*21ってとこです。ハイ。
金沢に先制されてたらズルズルだったかなとは正直思ってました。
そんな事情というか状況もあって、札幌は引き分けを狙うのが精一杯なリソース、金沢は岐阜が2点リードするまでは勝ちを狙ってはいた。など考えりゃ、やれ無気力だの談合だの、言えるもんかねとなる訳です。そんな個人的な感情からの暴言なんかねぇ、あたしゃ認めないよ。*22
今度こそ以上じゃ!
ショアッッッ!!!!
*1:堪え性や理解力がない人にしてみれば
*2:札幌と金沢
*3:岐阜2点リード、北九州2点ビハインドにより金沢にとって○△の利得が同一となった時間
*4:昇格後1年での即降格を仮定した場合の降格救済金含めた額と比べた場合
*5:わからんなら知らん
*6:この辺は今年のJ3栃木が、数年前にチーム崩壊に至ったにも関わらず、再びレバレッジかけた勝負してる臭くて、とても成り行きが怖い
*7:何回でも言うけど札幌と金沢
*8:後半の、60分過ぎから金沢の挙動と札幌の挙動が変わって行く様をもう一度御覧なさいよ
*9:J2優勝J1昇格の自力確定
*10:北九州が金沢の負けっぷりの更に6点差以上で負けなければいけない
*11:岐阜が△✕且つ北九州△✕且つ金沢◯
*12:北九州が金沢より7点差以上で負けてくれれば入れ替え戦:まず無理
*13:北九州より7点差以上で勝てば:まず無理
*14:現に札幌金沢の試合は上記の思惑がモロクソ表出したような、互いに攻撃に過剰な人数はかけない、守備に残す、リスクを管理したサッカーに終始した
*15:札幌は優勝によるJ1昇格、賞金2000万、来期分配金3億以上。金沢はJ3自動降格回避
*16:札幌が2位となった場合賞金は1000万、3位なら賞金500万でプレーオフ。昇格出来ないと増額分配金3億を得られない
*17:この時、90分過ぎに札幌ゴール裏一部から全く状況を理解しない残念過ぎるブーイングが発生するのだが、We Are SAPPOROコールから俺達の札幌を入れる事でこれを最小限に抑えていた。何気にこの対応は今季イチの対応だと思う。感謝。
*18:アビスパ福岡vs横浜マリノスにおいて、得失点差で降格したくないアビスパ福岡がビハインドで試合をクローズしにかかるという事がありましたが、アレはアビスパ福岡側の利得の為であり、横浜マリノス側と利害が一致している訳ではありません
*19:な?互いに何があるかわかんねーんだから、怖いだろ?
*20:ヘイス、荒野、石井、多分河合さんも
*21:左CBの櫛引。これにより堀米からの攻め手は数える程しか使えなかった