これは世界に触れてゆく話(めしにしましょう紹介)
「めしにしましょう」4巻が自分にとっては殊更グッときたので、ここまでも踏まえて紹介していきたいエントリである。
新進気鋭の漫画家广大脳子*2の元でチーフアシスタントとして働く青梅川おめが*3。
青梅川自身の圧倒的な手の速さと技術、更には全くもってニャオス*4な广の進行具合も相俟って、作業場における青梅川の料理は彼女の嗜好の赴くまま過激なものとなっていた。
仕事場の風呂場に熱湯を張り巨大な塊肉を低温定温調理*6する。
技巧などよりも、料理手順や発想をハックし、「世間一般に存在する料理」の出来上がりをバグらせる。
とにかく「強い」食材を「強く」使って「あり得ない強さ」の食事を作る。
などなど。
さて广の仕事場は、担当のガルシア
謎のマスクマン編集ザ・ダイスケ
作家志望の新人アシ馬場ヲッカ
らが登場しても、変わらず青梅川にとっての「世界」であり、青梅川は時たまザ・ダイスケから料理漫画をやるか?とか勧められたらしながらも、言動や料理、振る舞いを通じてその世界を享受していた。
というのが1〜3巻。
しかし3巻の終わり辺りから「安定していた青梅川の世界」は少しずつ動いてゆく。
料理は変わらず行われ、色々な登場者にも世界をブレさせられる事もなく話は進むが、广の担当ガルシアの退職と、それに伴う新担当の登場で、いよいよ青梅川を取り巻く環境、青梅川の内にある心を動かす変化が起こってゆく。
新担当凪無*8は广の側で好きに振る舞う青梅川を制する。社会の当たり前を提示する。
凪無*9が連れてきた臨時アシ二人
は青梅川のペースに乗らず逆らわず何とも社会的なもの態度で
青梅川の心をザワめかす。
更にピエロめいた方は青梅川の料理の背後にある意図、意志を指摘し内省を促す。
青梅川はここに至り、自分が如何にして世界と触れていたか、世界を捉えていたか、そして自分が何をしていたかを考え、向き合う。
強さ、(強さの)大きさ、を求めていた青梅川の料理は、変容をもたらす。
そこには柔らかさがあり、これまでの人をねじ伏せる、ぐうの音も出なくさせる圧倒的な「圧」は少し後ろに下がっていた。
青梅川はここで「世界」に触れた。
それは「閉じた自分を守る自分が捉えている心地の良い世界」から「開いていて、状況に応じて動く、何ともままならぬ不確かな世界」に触ることと言い換えられないだろうか。ないか。まぁ何となく伝わって欲しい。
青梅川が广から必要とされ続けたとしても、广の作品は評価され、广の担当は変わり、「青梅川にとっての世界を作っている广、广の作品を取り巻く環境」は変わってゆくのだ。
ここに紹介した4巻の展開は、連載開始当初の無頼で豪快な導入からは個人的に全く予想も出来ず、「外の世界に正対させられる」というシチュエーションは(繰り返すが個人的には本当に辛くて)胸が締め付けられた。
だがしかし、そうした内面や自己と向き合ったあとでも、めしはうまそうだった。これでよいのだ。おめでとう。
「まぁ、なんというか、めしにしましょう!」
寿司・虚空編のプロレス話*10で覚えた胸の苦しみが、また角度を変えて読み手の自分を「嫌でなく」締め付ける。*11
この漫画を、前身(なのかな?)の寿司・虚空編を、読んでてよかったと思った、そんな「めしにしましょう」4巻であった。*12*13
ともあれ塊肉は楽しいので炊飯器でもanovaでもシャトルシェフでも、あるグッズを使って各自好きにやっていきましょう。
以上ッッッ!!!
ショアッッッッ!!!!