土曜日は、とにかく暑かった。
前夜の深酒のダメージが抜けきる前に寝室の温度は上がりきり、昼過ぎにようやく起きて、塩と汁を求める身体に熱々のシーフードヌードルを流し込む。熱い。暑い。辛い。
部屋は軒並み室温30℃を越え、開け放した窓から開け放した窓を熱風が吹き抜ける。室温は、下がるどころか上がっていく。
ぬるい風呂を沸かし、入る。
気持ちいい。三日前にギックリ腰に見舞われた患部も、少しずつだが良くなってきている。
ぬるい風呂があれば室温30℃でもやっていけるかも知れない。希望ってやつだ。
風呂上がりにとっておきのアイスをコーヒーとともに頂き、一瞬の快楽を得る。
が、熱風が吹き抜ける我が家にはどこにも暑さからの逃げ場がない。このままではジリ貧だ。室温30℃でもやっていけるか?そんな訳はなかった。
窓を塞ごう。
傾く日、強い西日。それが我が家の排熱エリアである西側ベランダを超高温にしているのだ。遮光しよう。
既に体温ほどもあろう局所的高温に見舞われたベランダに出て、窓に遮光用のシートを貼る。風呂で流したはずの汗は、また身体の底から滲み出す。今、この作業をしてしまわないと、明日以降また辛いことになるんだ。
苦汁のような汗にまみれた頃、手持ちのシートを全部貼り終わった。
残念ながら、正直なんの変化も感じない。
車に逃げ込み、ちょっとした買い物と、バーガーキングで辛いハンバーガーを持ち帰り、やはり全然涼しくなってない部屋で、すぐぬるくなっていくビールと共に、バーガーを楽しんだ。
汗をかきすぎたのか、眠くなる。
日が完全に沈んだ頃、ようやく涼し気な風が入り始めた。心地よさと眠気に負けて、少し寝た。
気がつくと、風は快適な温度になり、ようやく身体が火照りを冷ましていくのを感じた。時間は23時。
水を飲んでいたら、流しの傍らから異臭がする。
連日の暑さで、袋に縛ったゴミがやばい匂いを放っている。まだ袋の容量には余裕があったが、仕方ない、ゴミを出してこようとなり、ついでにコンビニでも行ってしまわないかと嫁様を誘う。悪い男だ。俺は。嫁様はついてきてくれた。
ゴミをマンションのゴミ捨て場に出し、コンビニに向かう。暑くはないが、寒くもない。札幌はどんなに昼間暑くても、夜はTシャツ一枚だと腕が冷えるぐらいの風が吹くもんだが、今日はその風が冷たくない。
最寄りのコンビニの前を歩き抜け、少し散歩をしようと持ちかける。ついてきてくれる。嬉しい。
人気のない通りを、コンビニも2件ほどスルーして、歩く。
店がやってないのはこのご時世の要求によるもので、そういえばそうなんだよなと、今更ながら思い出した。
こんなにどこもやってないなら、夜の河川敷は飲みに来てる人で鴨川みたいになってるかもね。などと話して堤防の通りに出ると、すぐ酒盛りの集団が一つあった。
また一つ、また一つ。
湿った涼しい風を求めて数団体が河川敷で宴をしている。中にはテーブルを持ち込みライトをつけ、音楽をかけているのもいる。
禁止はされている。それは分かってて、普段はそういうの見るとムカッと来たりもするんだけど、暑い日の、ようやく気温が下がった頃にはもうお店もやってないような夜に、河川敷に集まってしまう感じが、なんだかいじらしいというか、じゃあどうしろっていうんだよっていう気持ちも少し感じて、悲しいような寂しいような、でも、いいよ、うん。みたいな気持ちになって、心地よいと言うには少しだけ湿っぽい風を浴びて、嫁様と並んで歩いた。
TOKYO2020の文字に、バスのグラフィックが描かれているだけの、何を言いたいのか全くわからない標識を眺めて、堤防通りから自宅に向かう。太くて強い蜘蛛の糸が、べっとりと纏わりついて、嫁様と手を振り回した。
自宅の最寄りのコンビニで、命をつなぐカップラーメン、炭酸水、こうなったら悪いことしちゃおうぜと、缶チューハイなんか買ってきて、帰宅。
蜘蛛の糸を流すシャワーを浴びて、さて悪いこと始めようかなと思ったんだけど、なんだか始める気にもならず、こうした日記を書いている。
とても暑い一日だった。